5年くらい前に同棲していた彼女の話。
当時、俺も彼女も25歳。
一緒に暮らし始めて1年くらい経った頃なんだけど、
彼女が深夜1時とか結構遅い時間に自分の部屋で誰かと電話してる声が聞こえてきたんだよ。
ちなみにそれぞれ自分の部屋持ちね。
最初は地元の友達とか職場の仲がいいやつとか、
そういう親しい感じの人とでも話してんのかなくらいにしか思ってなかったから全然気にしてなかった。
だけどそれが何日か続く事があって、あ、これはもしかして浮気の傾向か?なんて考えて落ち込んでたわけだ。
で、俺は意を決して彼女の部屋に忍び寄ったわけだが、そこで俺は思いがけないものを見てしまった。
彼女は確かに電話はしていたけど、ただの電話じゃなくてTV電話をしてたんだ。
ベッドに寝っ転がって、しかも風呂上りでキャミ一枚とかそんな恰好。
どう考えても俺や家族以外の前で見せる格好じゃないのね。
おいおいおいおいと、俺はその場で一瞬で沸騰して、
「おまえ、そんな恰好で誰とTV電話してんだ」
と怒鳴り込んだわけだ。
彼女、速攻で電話切って顔真っ赤にしてこっちを見返してくると、
「勝手に部屋に入ってこないで!」
と逆切れ。
力ずくで追い出され、部屋の鍵も締められて話し合いにもならない。
俺も俺で
「ふざけんな!説明するまで絶縁だ!」
と何とか言い返してその日からしばらく家庭内別居状態。
ところがある日の夜、彼女が風呂に入ったタイミングでそっと部屋を覗きにいってみると、いつもは風呂にまで携帯を持って入る彼女が、その日は珍しく携帯を部屋に置きっぱなしにしてたんだ。
俺はそのチャンスを見逃さなかったね。
速攻で携帯を開いて、彼女の発着信履歴とかメールとか一瞬で確認した。
するとさ、発信履歴は友達とか親とかの名前ばっかで別にどうって事なかったんだけど、着信履歴が知らない番号で埋め尽くされてたんだよ。
しかも、全部03から始まる固定電話の番号。
え、何だこれ?と思ってメールの受信開いたら、そこには何とかっていうサイトっぽい差出人からのメールばかり。
俺、完全にパニック。
するとその瞬間に風呂場からシャワーの音が消えたから、携帯全部閉じてそっと元の場所に戻して即退散。
最初何が何だか理解出来なかったんだけど、もしかしてという考えから、さっき彼女のメールを覗いた時に見つけたサイト名っぽい名前をパソコンで検索したら、やっぱりそのサイトはアダルト系で、しかも当時ちょっとずつ流行ってた双方向型のやつだった。
要するに、彼女、そのサイトに登録してチャットレディみたいな事やってたんだって事が分かった。
みたいな、っていうのは、彼女は自分のパソコンを持ってなかったから、TV電話とメールでやりくりしてたみたい(後から聞いた話で分かった)で、最初はまさかなんであいつがこんな事をって思ったんだけど、全然理由が分からない。
浮気するならこんな面倒くさい事するはずもないし、単に出会い系ならTV電話の前であんな格好する必要もない。
だから俺、フリーのメアド使って速攻でそのサイトに登録して、サイト上で彼女に接触する事にした。
もちろん登録した俺の情報は名前も年齢もプロフも全部デタラメ。
直接色々聞くのは裏取りしてからでも遅くないと思ったんだよね。
あと、正直そういうサイトで彼女がどんな事してるのか知りたいって気持ちがあったのも事実。
登録が終わってからサイトの女の子一覧を見てみると、速攻で彼女を発見。
顔は出してなかったけど、プロフ写真で使ってる画像の背景が完全に我が家だったし、首から下を映した下着姿の女性は間違いなく彼女だったからね。
鎖骨の上辺りにあるホクロで一発判定ですよ。
彼女の性格も生活も熟知してるから、仲良くなるのなんて超簡単な作業だったね。
さすがに電話なんて出来ないから、メールのやり取りだけだったんだけど、最初は
「こんにちはー、凄い綺麗な鎖骨ですねー」
とか、
「どこに住んでます?僕は○○(彼女の地元の地名)ですよー」
とか、ちょっと親近感湧くような事書いて送ると、食いつき方がハンパなかった。
「えー!私○○出身ですよ!もしかして知り合いとか^^;」
と彼女からの返信。
「そうなんですか?でも僕最近この辺に引っ越してきたばっかりだから多分違うと思いますよ。ていうか、駅前の△△っていうラーメン屋さん美味しいですね!」
みたいな事を返すと、もうそこからは地元トーク炸裂。
もちろんその辺の情報は全て俺が彼女から以前に聞いた話だから親近感が湧くのは当たり前なんだけどね。
そんなライトなやり取りを続けていると、彼女の方が痺れを切らして突っ込んできた。
「よかったらTV電話でお話ししません?声聞いてみたいな~」
「ごめんね、僕の電話はTV電話の機能がついてないんだ。電話も家族が横で寝てるから難しいんだよね」
「私とエッチな事したくありません?」
「直接会えるの?」
「直接会うのはもうちょっと仲良くなってからがいいな(ハート)」
「じゃあどうしたらいいのかな」
「リクエストしてくだされば頑張って写メ撮ります^^」
「どんなのでもいいの?裸の写メでも?」
「分かりました!ちょっと待ってくださいね」
正直、この辺のやり取りをしてる時は俺めっちゃ興奮してた。
次のメールが来るまでなぜかずっとソワソワしてたね。
すぐそこの部屋に彼女いるの分かってるのに。
その彼女が全然知らない見ず知らずのやつを相手に、自分の裸を自撮りして送ろうとしている気持ちってどんな感じなんだろうとか考えてると、めっちゃ勃起してた。
で、5分後に送られてきたのは、完全に今撮ったばっかりのおっぱい丸出しエロ写メ。
「恥ずかしいけど見てください(ハート)」
だって。
どういう事よこれ、っていう憤りの気持ちと、今まで経験した事がない興奮で本当に俺の頭の中がおかしくなりそうだったね。
あれはやばかった!
それからしばらく数日は色んな内容のメールをやりとりしてたんだけど、俺からリクエストするエロ写メもほぼ毎回送ってくれたよ。
リアルでのレス状態は相変わらずだったけど、生身で何度も見た事がある彼女の裸の写メで何度も抜いてしまった。
あいつこんなポーズ出来るのかとか、俺にも見せた事がないようなクソエロい下着とか付けて挑発してくる感じとか堪らなく興奮したね。
ただ、さすがに当初の目的である裏取りは完全に達成されたわけで、後はどうやって本人に問い詰めるべきか物凄く悩んだ。
悩んだけど、これはもう素直に聞いてみるしかないと。
これで揉めてどうにかなっても仕方ないなと。
でも、このやり取りの相手が俺である事は言わないでおこうと思った。
そして、その次の日だったかな。
彼女が相変わらず自分の部屋で誰かと電話しているタイミングを狙って部屋に行ったんだ。
絶縁宣言してから近寄ってなかったから、多分1週間ぶりくらいだったと思う。
部屋から聞こえてくる電話の声は前よりも大きかったんだよね。
だから俺は気づかれないようにドアをそっと開けてみた。
彼女、TV電話に夢中で全然気づいてなかったみたい。
ベッドの上には完全に全裸状態の彼女。
TV電話のカメラに向かってアヘ顔してやがる。
片手で携帯持って、もう片方の手でクリちゃんとかビーチクとかずっと弄ってる。
ある程度覚悟した上で部屋に行ったんだけど、正直あれ直接見た時はショックだったね。
もう心臓がバクバクして言葉が出てこないの。
フリーズ状態で、しばらくドアの隙間から覗いてたら電話が切れたみたいで、その時やっと俺が覗いてる事に気が付いてハッて顔してた。
そして俺は前みたいに怒鳴ったりせず、一言言ったんだ。
「隠さなくても、お前が○○ってサイトでチャトレみたいな事やってるの、知ってるよ」
と。
彼女すんごい目を丸くして、
「何で知ってるの!もしかして携帯見たんでしょ!」
と、かなりの剣幕で俺を睨んでくるわけ。
「それを知ってどうするの?私のこと軽蔑した?汚らしい?」
ちょっと涙浮かべながら食いついてくる。
「汚らわしいとか軽蔑とか感じてないよ。てかごめん。正直言うと知って興奮してしまった」
と素直な気持ちを伝えたんだ。
すると彼女、
「何それ、超キモい!」
と叫んだ後、
「ごめん、ごめんなさい・・・」
と今度は泣き崩れながら謝ってきたんだよ。
ああ、これはちゃんと話を聞いてあげないとダメだな、とその時思った。
その後は基本的に俺から質問するような形で色々聞いてみた。
「どうしてこんな事やってるの?」
「お金欲しかったの」
「仕事してるんだし、そんなに困ってるわけじゃないでしょ?」
「俺君、仕事忙しそうだったからなかなか話す機会がなかったんだけど、仕事辞めちゃった」
「えっ?」
全然知らなかったんだけど、どうも仕事がトラぶって責任取らされるような形で自ら会社辞めたらしい。
何だそれ!と思いながらも話の続きを聞いてみた。
同棲しているとは言っても結婚してるわけじゃないし、他人同士の同居には変わりない。
俺君1人の給料じゃ毎月の生活費賄えないの知ってたし、だからと言ってすぐ次の仕事が見つかるほど景気のいい世の中じゃないのも分かってる。
とりあえずその場しのぎのバイトを探そうと思ったけど、とてもじゃないけどコンビニとかファミレスの時給ではやっていけない。
だから凄く嫌だったけど、最初はお水や風俗も考えてた。
でも、それ系(水、風俗)専門の求人誌を読んでみたらこの仕事の募集を見つけた。
これならお店に出勤しなくてもいいし、接客もしなくていい。
見られるのは好きじゃないけど触られるより全然マシ。
それがこれを始めたきっかけなんだそうで。
ひととおり事情を説明した後に、
「お金のためとは言え、例え画面越しでも見ず知らずの他人に自分の彼女の裸を見られるのはやっぱり嫌だよね」
と、最後に彼女は消え入るような声でボソッと言ったんだ。
でも俺は
「嫌だけど、嫌じゃない」
ってハッキリ言った。
「え?は?」
彼女、思わぬ反応で二度見してきた。
「さっきも言ったけどなぜか興奮してる、俺」
「頭おかしいんじゃないの?」
「うん、俺もおかしいと思う」
「そういう性癖あったっけ?」
「分かんない。けどどうしても許せなくて怒り狂う感じではないよ」
「好きじゃなくなった?」
「むしろ逆かな」
「わけ分かんない。つまりどういう事?」
「続けていいよ。てか、続けてほしい」
あーああー、言っちゃった!って感じだった。
その後はもう俺も開き直って、
「せっかくやるならがっつり稼いじゃえよ。画面越しの疑似恋愛なら俺も許容出来るし、正直俺が萌える」
彼女、もしバレた時は俺が激怒して関係がこじれるんじゃないかって事を一番気にしてたみたいで、そう言われると思ってなかったから逆にちょっと引いてた。
けど俺君がいいって言うなら”とりあえず次の仕事が見つかるまでの繋ぎ”という大義名分の元で続けていきたいんだと。
意見が合致して、俺は思わずニコっと笑ってしまった。
彼女も安堵して、さっきの泣き顔から一変してニコっと笑ってた。
俺はどうしても彼女に確認したい事があった。
「画面越しに自分の裸を知らない男に見せるってどんな気分なの?」
「どうって言われても・・・」
「自分の裸見られて興奮されてんだろ?目の前でオナネタにされてんだろ?それって見せてるお前は嬉しいの?嫌なの?」
「んー、正直言うと嬉しい時もあるし、嫌な時もある」
「嬉しい時ってお前も興奮してる?」
「してる」
「マジか」
「うん、ごめん」
「そういう時って濡れてるの?」
「びっちょびちょ。てか、何で今勃ってんの?」
「ごめん」
「意味分かんない」
と言いながら、彼女のパンツの中に手を入れたらめっちゃ濡れてた。
これってさっきのTV電話の後だから?って聞こうとしたら、
「さっきのじゃないよ。俺君が興奮してるから私も興奮してきちゃったの!」
と俺が言おうとしたこと先読みされた。
そのままめちゃくちゃセックスした!
次の日、彼女は早速昼間から家でTV電話に出まくっていた。
俺は仕事だから直接は見れないけど、携帯でサイトをずっとチェックしてたから、彼女がインしてるのがよく分かった。
電話がかかってこない時はサイトの表記が”待機中”と表示されるんだけど、誰かから電話がかかってくると”入室中”と表示される。
短い時は5分くらいですぐ終わるけど、長い時は30分以上も入室中だった。
その出入りが気になりすぎて仕事が手につかなかったので、夕方くらいに、
『どう?盛り上がってる?』
と意味の分からないメールを送ってしまった。
送った後に、俺は何を言ってるんだとちょっと後悔してしまった。
でも彼女からは
『興奮しすぎてやばいよー!ムラムラしっぱなしだから俺君早く帰って来てね』
だって。
いてもたってもいられなくなって、入社以来初めて俺は定時で会社を出た。
速攻で家に帰った俺は、玄関のドアをこっそり開けて中に入った。
今日は遅くなるかもと言ってあったからだ。
もちろんこれは彼女を油断させるためのウソ。
昨日彼女と話してる時に、今度TV電話してるところをまた覗かせてほしいと言ったら、
「嫌だ。俺君には見られたくない。俺君が家にいる時はしない」
とハッキリ断られた。
さすがに俺の目の前で他の男と話をするのはめちゃくちゃ恥ずかしいんだそうで。
終わり。