妻はヌードモデル

部屋の真ん中、小さな雛段の上に、妻が座っている。一糸纏わぬ裸で。
そしてその妻のまわりを、私を含めて10人あまりが取り囲んでいる。
そのほとんどが男性で、女性も少しいる。
妻はその裸身を、四方八方から見られている。隠すことを許されない、見せるために…見られるために、全裸でそこに座っている。妻はヌードモデル…。
妻の明希は32才。
子供はなく、童顔の妻は、実際の年齢よりも5才以上は若く見られる。
流行の小顔に、見る人の目に心地よいスレンダーな身体。
栗色の髪を、普段はポニーテールにまとめている。

少し個性的ではあるものの、よく整った顔立ちは、大方の人が美人と言ってくれる。
私…風采のあがらない中年男である…には不釣り合いと言われても仕方がない。
そんな、私にとっては「珠玉の」妻が、私のために、私のせいで、その裸身を自ら差し
出しているのだ。

妻がモデルの仕事をはじめて、1ヶ月になる。
折からの不況で、私が勤めていた会社が倒産したことがそもそもの始まりだった。
運良く次の仕事には就けたものの、収入は激減し、生活のために妻の協力が必要になっ
たのだ。

しかし、良家の箱入り娘で育った妻に、普通のパートなどが勤まるわけもなく、美大に
通っていた頃のつてを頼って、派遣モデルに登録したのだった。

もちろん最初は着衣のモデルだけという約束で登録したのだが、現実にはそんなこと
で満足に仕事を回してもらえるわけもなく、結果的にはうまく騙され、口車に乗せら
れ、半ば脅されたような形で、ヌードの仕事を受けるようになった。

そういう訳で、既に今までに3回、ヌードモデルの仕事をした。
手にした報酬は10万あまりである。
そして、私は今日はじめて、妻の仕事場に入ったのだ。

私も絵には関心以上のものがあり、妻と出会ったのも、ある新進画家の個展を見に行っ
た時だ。

もっとも美大出の妻とは違い、今の私は、自分が絵筆を持って絵を描くことは全くない。
私が今ここにいるのは、全くの興味本位…あからさまに言えば、大人数のまえで裸にな
る妻を見たいという、倒錯した欲望を満たすためだ。

もちろん妻は私が来る事を嫌がったし、涙を流しながら、来ないでほしいと哀願した。
しかし妻のその涙は、私の捩れた欲望を一層かき立てるばかりだった。

結局私は、夫婦であることを隠して、ヌード画の愛好家の一人として、ここに潜り込ん
だのである。

最初は2列に並べられた椅子にメンバーが座って待ち、そこに裸の上にガウンを纏った
妻が、主催者とアシスタントの初老の女性に連れられて入ってきた。
妻は私のほうを見ないよう終始俯いたままだった。

主催者は、この研究所で教える画家くずれで、某美大の講師かなにかをドロップアウト
したという。

中央の雛段に上がり、主催者は、
「今日、我々のモデルを勤めて下さる、秋田奈穂子さんです。」
と、妻を仮名で簡単に紹介すると、これも描き手の一人として妻を描くらしく、空席に
すわって説明した。

「今日はポーズは3つで、1ポーズ30分づつ、途中に5分の休憩をはさみます。
そして10分休んで次のポーズという具合です。まずモデルさんにポーズを作っていた
だき、その後で皆さんはご自由に移動して場所を決めてください。

今日は特に大人数ですので、譲り合ってお願いします。
もちろん、モデルさんの体に触れたり、近付きすぎたりなど、失礼が無いように。」
そして「では、お願いします。」と妻に声をかけた。

妻の隣で待機していたアシスタントが、妻を促し、ガウンに手をかける。
妻は俯いて目を閉じている。
私の興奮は最高潮に達していた。
いよいよ妻が衆人環視の中、裸になるのだ。

女性が妻に声をかけた。
「緊張されてますね?だいじょうぶですか?」
「は…はぃ。すみません。お願いします。」
正に消え入りそうな声である。

女性は妻に優しく微笑みながら、ガウンの紐を解き、両襟を開いていった。
「あぁ…」
その時、妻の口から漏れたため息を、私は聞き漏らさなかった。
ガウンの前が開かれる瞬間、妻は反射的に両腕を交差させて、乳房を隠そうとした。

しかし、あからさまに乳房を隠すわけにもいかず、その動きは、妻の恥じらいの様子を
強調する役目を果たしただけだった。
私のまわりの何人かの口からも、「はぁ」「おぉ」という、感に堪えたような吐息が漏
れた。

交差した両腕の隙間からは、小振りな、それだけに形の良い乳房が見える。
贅肉のないスッキリとしたおなかには、愛らしいお臍が見える。
ここまでは何でもない。

プールで水着姿を誇らしげに見せつける、均整のとれた美しい自慢のボディだ。
しかし今はそれだけではない。
乳房を覆う一片の布切れもない。

腕の隙間、乳房の真ん中近くには、褐色に色付いた乳暈が見える。
ここから先は、本来は私以外には見せてはいけない、私だけのもののはずだ。
それを今は、たくさんの男女のまえに晒している。

私の位置からは乳暈の端が見えるだけだが、他の位置からだと頂に震える乳首までもが
見えているはずだ。
そして…ついにガウンを取り払われた妻の体は…

両腕は乳房を…乳首を隠そうと胸元を押さえているため、股間は切なく晒されているのだ。
夫である私以外には決して見せてはいけないはずのところ。
モデルを始めてから、着衣の時にも「ハミ出さないように」と念入りに手入れしていた
陰毛を晒している。

それだけではない。
妻の薄い陰毛は、その奥の秘部をきちんと隠す事ができないのだ。
小さく纏まった、縮れが少なく短い陰毛の奥には、うっすらとではあるが、性器が見
え隠れしている。

静かに直立した姿勢なので、露骨に開くようなことはないものの、明らかに縦のスジと、
その両脇のふっくらとした陰唇が認められるのだ。
妻はすぐに、股間を…陰毛を隠すように右手を下げたが、やはり、あまりあからさまに
「隠す」というのは、ポーズとしては無理がある。

陰毛の上半分ほどに手を添えた程度で、相変わらず性器は顔を覗かせたままだった。
メンバーたちは…
女性は二人ともさりげなく目をそらせている。
しかし男性達は、全員が妻の裸体を凝視している。

どの男も、崇高な芸術などとは程遠い、ギラギラと欲情した目で妻を視姦しているのだ。
乳首を、陰毛を、そして微かに見える性器を。
私の妻の、私だけの性器なのに…

「やめろ!見るな!これは私の妻なんだ!」
そう叫んで駆け寄り、抱き締めて他人の視線から守ってやりたい…
そんな衝動にギリギリのところで堪えた私は、激しく勃起していた。

しばらくして、主催者が、妻に声をかけた。
「それでは、一つ目のポーズをお願いします。」
「はい。」
かすれた声で答える。

「あのぅ…」
その時、私の隣にいた若い男が、手を上げながら主催者に話しかけた。
「あの…もし良ければですが、最初は今のそのポーズで…というのはダメでしょうか。」
「?」
「その…自然な恥じらいと言うのか、とてもいい表情、いい雰囲気だと思うんです。」
瞬間、妻の体が羞恥に震えた。

裸を見せるのはあくまで仕事…と割り切ろうとしている妻にとって、恥じらいの表情を
公然と指摘され、それを題材にされるのは、相当に恥ずかしいのだろう。
その気持ちは私にはよく分かる。

芸術のためのモデルから、好色な男達の生贄に堕とされた気持ちなのだろう。
それだけに私は、配慮の足りない若者に腹をたてながらも、「よく言ってくれた」と感
謝したい気持ちもあった。

「そうですね…皆さんはいかがでしょうか。私も、初々しくていい表情だとは思います。
反対意見がなければ、まずはこのポーズで描いていただこうかと思うのですが。」
全員が、無言で首を縦にふり、異存のない事を示している。

何か言いたそうな妻の意思は完全に無視されている。
もちろん私にも異存などなかった。
「では、最初はこの形で、皆さん、場所を決めてください。」
それぞれ席を移動し、妻のまわりを囲むような形で、各自の場所を確保した。

あっと言う間に…妻にとっては長かったかもしれないが…最初の15分がすぎた。
アシスタントの女性が妻にガウンを羽織らせてくれた。
身体を縮めて袖を通した妻は、手早くガウンの前をあわせて紐を結ぶと、女性がもって
きてくれた椅子に頽れるように座った。

5分間の休憩の間、誰も一言も口を開く者はなかった。
妻も、出された飲み物に手をのばすこともなく、じっと俯いていた。
もっとも飲み物に関しては、トイレの心配もあって、よほどのことがない限り手を出
さないのが普通のようだ。

5分後…
「それでは始めましょうか。お願いします。」
椅子が片付けられ、妻の体からガウンが剥ぎ取られた。
再び妻は裸身を晒した。

主催者が立上がり、ポーズを直すように指示しだした。
「えっと…右手はそんなに下げないで、もう少し上に…そう、私のところからだと、さ
っきは少しだけ…その…体毛が見えてたんで…」
次に、さっきの若者が口を挟んだ。

「あの、左肘はもう少し下かな?でないと、乳首が隠れてしまってて…」
妻は、陰毛を隠すな、乳首を見せろという指示に従って、真っ赤になりながらも、手
の位置ををずらした。



(こいつら、わざと恥ずかしがらせて楽しんでやがるのか!)
私は、激しい嫉妬に駆られながらも、同時にそのまま精を放ってしまいそうなほどの興
奮を感じでいた。

そして15分、ほとんどの人が、妻の裸像をほぼ描き上げていた。
「ではそろそろお時間ですが、皆さん、いかがでしょうか?少し延長…大丈夫ですね。
モデルさん、お疲れ様でした。」
ようやく最初の立ちポーズが終わった。

ところが、アシスタントの女性がなかなか表れないのだ。
妻はポーズを崩して体を縮め、両手で胸と股間を隠しながら立ちつくしている。
扉のほうを伺いながら、ひたすら女性が表れてくれるのを待っている。

そのまま1分ほどの時間がすぎた。
妻は堪えきれなくなったのか、全裸のまま、自分で自分の体を抱き締めた格好で、その
場にしゃがみこんでしまった。

女性達は気の毒そうに妻から目を逸らせているが、男達は全員が妻に注目している。
(これでは晒し者ではないか!かわいそうな明希!)
しばらくして、アシスタントの女性がガウンを抱えて、あわてて入ってきた。

「ごめんなさいね。ちょっとお手洗いに行っておりまして。」
上目遣いに、恨めしそうに見やる妻。
ようやく肩にガウンをかけてもらい、恥ずかしい裸を覆い隠すことができた妻は、素早
く両袖を通して紐を結んだ。

気まずい雰囲気を振り払うように、主催者が立ち上がって言った。
「はい、では、次のポーズに移るまえに、しばらく休憩の時間をとらせていただきま
す。モデルさんも、一旦下がっていただいてもかまいませんよ。」
妻は救われたようにホッとした表情で、退出していった。

しばらくして、主催者他数人がソファを運びこみ、雛段の上に据えた。
続いて妻が入ってきて、今度は、身体を隠す間もなく、あっさりとガウンを脱がされた。
主催者がポーズを指示する。

「では次は、ソファに寝そべった形で…」
少し言いにくそうに口ごもっている。
「…そうですね…その…男を誘うような、淫らな雰囲気を出せるといいのですが。」
人妻に対して「淫らになれ」とは、なんと言うことを…

雛段に上がった妻はソファに身体を横たえ、左を下に、左肘を着いて横向きになった。
右手は股間を覆っているが、乳房は覆うべくもない。
主催者が雛段の横に立った。

「少し、ポーズをつけさせてもらいます。」
さして広くもない雛段である。
全裸で横たわる妻の至近距離で、あれこれと指示しだした。

あの距離では、肌の細かい状態…毛穴のひとつひとつや乳首のぶつぶつした質感まで、
すべて分かるだろう。

私でさえ、夫婦のセックスの時でさえ、そこまで近い位置から凝視したことが何度ある
か…

「体は少し起こして、ソファにもたれましょうか。そう、左肘も背もたれにのせて。」
この時点で妻の双の乳房は、ほぼまっすぐ正面を向いて、皆の視線に晒されている。

「左脚は、ソファから下ろすほうがいいかな?少し、しどけない雰囲気が出せるといい
んですが。」

…左脚を下ろす…

それでは股を開くことになるではないか。
妻は、頬を染めながら指示に従った。
股間に置いた右手に、少し力が入ったのがわかる。
私には、妻の切ない気持ちがひしひしと伝わってきた。

「うーん、右手を外したいんですが、それではあまりに大胆なポーズになってしまいま
すね。右膝を少しまげて、そう、少し内股ぎみに、恥じらいを感じさせるように…それ
でいい。じゃあ、右手は顔のほうに…頬のあたりに沿えるぐらいでどうでしょうか?
あ、あまり胸を隠さないようにしましょう。」

とうとう秘部を覆っていた手が外された。
内股とはいえ、妻の両脚は開かれて、秘部は正面を向いている。
陰唇が少し開いているのがハッキリと見て取れるのだ。

妻にとって最もプライベートな、私だけの秘密の部分が、剥き出しになっているのだ。
女性のメンバの一人が、遠慮がちに声をかけた。
「あの…それだと見えてしまってるんですよね…ここからだと。その…中のほうまで…
いいポーズではあるんですけど…」
この指摘は、妻を狼狽させるに十分だった。

妻は顔を背けてに脚を閉じようとした。
ポーズをつけていた主催者が慌てた。
「あ、ダメですよ、動いちゃ。そのままで。」
とっさに妻の太股を掴んで押さえ付けている。

私も狼狽した。
目の前で他の男が、裸の妻の太股の付根を掴んで股を開かせているのだ。
その指先はほとんど性器に届きそうな場所だ。
ヌードモデルだから、見られるのはいい。
いや、良くは無いが仕方がない。

しかし、触れてはいけない。
それは最初に主催者自身が言ったことでもある。
ギリギリ最後の限界線…それは、「触るのを許されているのは私だけ」であったはずだ。
妻の体の内で、おそらくは最も柔かい部分を、他の男の指が触れて…深く食い込むほど
に掴んでいるのだ。

驚いて睨んだ妻の視線に気付いて、すぐに手を離した。
「あ…失礼。けれど、動かないでくださいね。お願いします。」
妻は羞恥と怒りに震えながら、それでも主催者の指示どおりに力を抜いた。

相変わらず、パックリと開いた秘裂はあらわなままである。
その後の主催者の説明は、どう贔屓目に聞いても、言い訳じみていると言わざるを得
ないものだった。

「これは芸術ですから…それも、絵画なんです。写真なんかだと、何でもありのままに
描写してしまいますが、絵の場合は書き手の意思というフィルターがかかります。も
ちろん、その部分をクローズアップして、微細に、かつ、どギツく表現する手法もあ
りますが、それは特殊なものです。今日ここにお集まりの皆さんは、その点では至っ
て常識的な、良識を持った方ばかりです。我慢して…いえ、安心して…不自然になら
ないポーズをお願いします。」

ごく普通の…いや、普通以上に清楚な女性が、自身の性器を、その内側まで、こうまで
露骨に晒した状態で、どう安心しろというのか。

しかし、いまさら異を唱えるわけにもいかず、あからさまに開いた性器を、その
後30分以上も晒し続けることになった。

「では、ポーズのほうはこれでよろしい…ですね?
皆さん、移動して、準備の整った方から、描きはじめてください。」
私は、誰がどの位置を占めるか、注意して観察した。

先ほどの若者は…
半ば寝そべった妻の正面、下半身よりで最も近い位置…
1mも離れていない…つまり、妻の開かされた性器を至近距離から観察できる場所
というわけだ。

明らかに妻はこれに狼狽している。
しかし、近付きすぎ等と苦情を言えるか、ギリギリの微妙な距離でもあった。
結果…成り行きどうり、容認するしかなかった。

約15分後…妻にとってどれほど長い時間だったろう…まもなく休憩という時に、主
催者が話し出した。

「まもなく休憩にはいりますが、モデルさん、微妙なポーズですので、できるだけその
ままのポーズでいていただきたいのですが…あ、モデルさんにガウンをかけて差しあげ
て、早く…」

アシスタントの女性が、素早く、かつ、丁寧に、妻の体にガウンを被せてくれた。
体を…あからさまな性器を隠してもらえて、いくらか緊張が解けたのか、妻は少しだけ
姿勢を崩した。

休憩。
何人かが席をはなれた。
妻を至近距離からかいていたあの若者も、トイレにでも行ったのか、席をたった。
私はずっと気になっていた。

アイツ、どんな絵を描いているのか。
描いている途中も、自分の絵をまわりに見られないよう注意を払っているように見える。
不自然なのだ。
何気ない風を装いながら若者の席に近付いた。
やはりスケッチブックは閉じられている。
開いて見るわけにはいかない。

私が若者の近くに移動すれば、描いているところを覗くことができりだろう。
幸い、席を移動しようとしている人が2人ほどいる。
1枚目を書き上げて、別のアングルを探しているのだろう。

私もそんな一人を装い、移動することにした。
若者の斜め後ろ、最後列に少しだけスペースがあるのを見て、そこに移った。
そこからなら、立ち上がれば、若者の絵を覗くこともできそうだ。

妻は、私が移動したのに気付いたようだったが、表情には何も現さなかった。
休憩時間がすぎて、再び妻の裸体があらわにされた。
私の斜め前に座った若者は、スケッチブックを膝に乗せると描きかけのぺージを開いた。
そこに描かれているものを見て、私は目を見張った。

なんとそれは、妻の性器だけを抜き出して描いたものだった。
細密画とでもいうのか…しかしその絵は稚拙で、芸術などとは程遠いものだ。
生で女の裸を見たいためだけにここにきた…潜り込んだ…としか思えなかった。

今も、描くことよりも、目の前の女の裸を、性器を、自分の目に、脳に焼き付けること
のみに専念しているのだ。
妻をこんな男に見せねばならないとは…

この男は、おそらく家に帰ってからも、妻の姿態を、乳を、秘部を思いだし、脳裏に
描きながら、オナニーに耽るに違いない。

美しい妻を思いのままに辱め、自由に弄び、犯し、最後には妻の子宮に己の精子を浴び
せることを妄想するのだ。

私は、憤りに震えるとともに、目の前で裸で横たわる妻に、激しい欲望を感じた。

今夜、どのようにして妻を責めようか、その体が私だけのものであることを思い知ら
せようか、考え続けた。