8年前のクリスマス。
それは彼女の25回目の誕生日。
見た目には周りのカップルと何ら変わらないデートに指輪のプレゼント。
何度も抱き合い、そして最後のキス・・・。
すべての出来事が別れへのカウントダウンのように思えた。
「またね」とは言えない最後の別れ。
いつもと違う「じゃあね」を言い、車を走らせて1人で泣いた。
出会いは13年前。
職種は違うが、僕らは同期入社で、しかも同じ店に配属された。
お互い垢抜けない感じで、恋愛対象としては全く見ていなかった。
転機は4年ほど経った2月のある日。
たまたま帰るタイミングが一緒になって、何のやましい気持ちもなく彼女を送ることになった。
その当時、僕は結婚を決めた女性がいたし、彼女もそのことを知っていたのだ。
しかし、運命の歯車はそこから少しずつ狂い出す。
どういう経緯かは思い出せないが、たまたま下ネタを話していた時に、車の中にたまたまあったエロDVDを彼女が見つけてしまった。
職場でも割と開けっぴろげに下ネタを話す子だったせいか、そのまま一緒にDVDを観ることになった。
そこで、自分がおっぱい星人であること、彼女はDカップあること、彼氏とは年末に別れたことを打ち明けた。
状況が状況なだけに何となくお互い会話もなく変な気分になって、怪しいやりとりが始まった。
俺「本当にDカップあるの?」
彼女「結構美乳なんだよ」
そう言って彼女は、その日着ていたニットの服の胸を前に突き出した。
普段、制服姿しか見ていないせいか、確かにデカい。
そこからは無意識に彼女の胸に左手を伸ばしていた。
最初は全体を覆うように。
ニット越しに伝わるブラジャーの感触を確かめながら・・・。
「へえ~、意外と大きいね」
なぜか彼女が抵抗しないのをいいことに、そのままおっぱいを揉み続けた。
後で分かったことだが、彼女は胸(特に乳首)が感じやすいらしく、すでに触っていたときにアソコはグチャグチャに濡れていて、家に帰ってからオナニーしたそうだ。
その日はおっぱいを触っただけでエッチをすることもなく帰ったが、後日、また一緒に帰る機会があった。
(というか、僕が合わせた)
車中、この前のおっぱいの感触が忘れられないことを伝え、また触らせてもらうことに。
そこからはなし崩し的に行為が激しくなり、ホテルで一線を越えてしまった。
(実は当時、彼女は上司と不倫関係にあり、そのことを自分は半年後に確信することになるのだが、それはまた追々・・・)
初めはどこにでもあるような身体だけの関係だったはずが、やがてお互いに心から愛する存在へと変わっていった。
4月、自分は当時の彼女と婚姻届を出すことになり、一度は彼女との関係を終わらせるはずだったが、自分の弱さから彼女に関係を求め続けた。
今思えば、帰る時間が極端に早くなり、休みも合わせていたから周りから見てもおかしかったに違いない。
仕事も今まででは考えられないような凡ミスが増え、やる気もなくなっていた。
もはやそんなことすらどうでもよくなるほど僕は彼女にのめり込んでいた。
帰りはほぼ毎日一緒。
週に3、4回エッチして、彼女が生理中の時は口でしてもらうことも。
ホテル代もかさむので、車の中でエッチすることもたびたびあった。
職場まで車で30分なのに、帰りの遅い自分に嫁は何も言わなかった。
それをいいことに、休みの日も傍から見たら普通のカップルのようなデートをしていた。
でも、常に他人の目を気にしながら過ごしていた時間を彼女はどう思っていたのだろうか。
ただの身体だけの関係だと思っていたのだろうか。
そんな時、上司と不倫関係にあるんじゃないかと疑うことがしばしばあった。
「今日は一緒に帰れない」という返事をされることがあって、そんな時は連絡をしても返事が来るのは数時間後。
ある時、体調が悪いと言われ、「送って行くよ」という申し出も断られたことがあった。
先に帰ったふりをして会社の裏でこっそり待っていると、30分ほどして彼女が帰る方向とは逆の公園に現れた。
そこで自分の車を見つけた彼女から電話が鳴り続けた。
「ごめんなさい!別れないで!」
「断れなかったの!」
「抱かれても感じなかったの!」
「もう◯◯君のことしか好きじゃない!」
自分だって妻がいる立場で彼女と不倫関係にあるのに、それを棚にあげて当たり散らした。
結局、上司とは終わりにすると約束して表面上は仲直りしたが、しばらく誰のことも信じられなくなった。
しかし、その後も逢瀬は重ねた。
10月のある日・・・終わりは突然だった。
会社の近くで待ち合わせをしていたところを同じ職場の人に見つかったのだ。
瞬く間に噂は広がった。
彼女から「もう終わりにしよう」と告げられ、最後のデートは彼女の希望でクリスマスにすることにした。
そこからは地獄だった。
職場では常に顔を合わせなければいけない。
抱かれていた上司には何を思われているのか。
結婚したばかりで周りから祝福してもらいながらこの様か・・・。
すべては身から出たサビ、自業自得。
でも誰にも相談できない。
そして迎えたクリスマス。
もう二度と2人で過ごすことのない最後のデート。
「指輪が欲しい」と言った彼女に、決してすることのないペアリングをプレゼントした。
付けるのは、今日が最初で最後。
別れ際、彼女は泣きながらこう言った。
「私のこと、こんなに好きになってくれた人はいないよ。◯◯君以上の人はいないよ。私も好きじゃない人と結婚する。でも生まれ変わったら誰よりも最初に私が◯◯君のことを見つけるから」
あの時、別れるなら嫌いになって忘れてしまおうと徹底的に避け続けた。
それでまた彼女を傷つけた。
そして8年後、こんなどうしようもない自分のことを彼女はまだ思い続けてくれていた。