ヤンキーな土地柄でシンママと忘れられないセックス

何年か前、北関東のとある県に半年だけ住んでいた頃の話。

俺は主に女性を配下に置いて営業の指導をするような仕事をしていた。
もう仕事を辞めることを半ば決めていた矢先の転勤。
転勤先がその北関東で、絵に描いたようなヤンキーの土地柄だった。
大体みんな高校を出たら人生を決めてしまって、車の改造に金をかけたりして、20代前半辺りで結婚して、生まれた子供にはミキハウスの服を着せて後ろ髪を伸ばさせて・・・なんていうのが一番ポピュラーな生き方みたいな土地だった。
新鮮は新鮮だったが・・・。

知らなかったが、よくよく考えてみると、そういう結婚が全部上手くいくわけじゃあない。
失敗して、若いうちから1人で子供を抱えてなんとか食べていかなきゃいけない、みたいな女の人が俺の下にも何人かいた。

彼女もその1人だった。
まだ三十路手前なのに小学校3年生の息子を養っていた。
最初からこちらを意識していたのはなんとなく分かっていたけれど、そんな事にいちいち反応していたら仕事にならない。
彼女もいない、結婚もしていない。
彼女に限らず、色んな職場の女性たちにとって格好の標的になるのは分かっていたので、こっちは全力で唐変木を決め込むしかない。
それでも積極的に仕事に向かおうとする人間には自然とフォローにも力が入るので、自然と一緒にいる時間は長くなる。
でも俺としては、何も気付いていない顔しかできないし、しちゃいけないって考えていた。

それでも彼女はだんだん変わってきた。
ほとんどしなかった化粧をするようになったし(仕事の上でも好ましいことだけど)、着る物にも気を遣い始めた。
もちろんこちらはその意図がどんなものでも、仕事の上でプラスになる変化ならちゃんと褒める。
まぁなんだか妙なことになってきたなとか呑気に思いつつ、彼女が女であろうとし始めたことを良いことかなと思うようになった。



そのうち、ある晩、彼女から電話がかかってきた。
もちろん電話番号なんか教えちゃいないし、電話帳にも載せていない。
でも、その時は深くは考えなかった。
同じ職場で働いているのだから電話番号を知る方法なんかいくらでもある。
こちらも知らない土地で1人で暮らしているので暇といえば暇だし、彼女と話すことで普通は捉えきれないような職場の女性同士の関係も聞くことができる。
こちらからは決して電話はかけなかったけれど、時折そうやって電話で雑談なんかをしていた。

雑談に留めていたのは俺の方で、そのうち彼女から、「今から夜景を見に行こう」という電話があった。
そのとき俺はもう酔っぱらっていたから、「今から出て行きたくない」って言うと、「じゃあ迎えに行くから」と言う。

なぜ俺の家を知っていたんだろう。

まあ俺は酔っぱらっていた。
彼女を部屋に入れた。
下らない話なんかをしながら、彼女が(たぶん俺と会ってから思い出したであろう)フェロモンを一生懸命に絞り出しているのが感じられた。
彼女は俺からするとそれほど魅力的には見えなかったけれど、それでも女であることを思い出したんだったら、それはそれで良いことかなとか思っていた。
どうせもう、その土地を離れることは決めていたし。

そして彼女に口づけをされた。

「抱かれたいのか?」

俺がそう聞くと、「抱きたいの?」と聞き返してきた後で・・・。

「素直じゃないな、あたしも」

そう小声で言った。

職業上だけではなく、職場の女とは寝ないのが個人的な線引きだったけれど、その時は彼女をベッドに入れてしまった。
早くに子供を生んだからか、彼女は未開発だったようで、指で愛撫していると・・・。

「イッたことがないからイクのが恐い」

そう言って腕を掴まれた。
彼女に“女”を思い出させるのが面白くて夢中になったことは否定しないけれど、行為を終えた後で彼女は、「こんなに気持ち良かったのは初めて」と言っていた。

それからすぐに俺はその土地を離れた。
引っ越しの準備を彼女に手伝ってもらったりして。
だいたいの女と1回くらいは忘れられないセックスがあるけれど、セックスそのものが忘れられないのは彼女が一番かな。